gymnoの自由談

音楽系、プログラミング系の内容 方針はいずれ

赤毛の司祭 東京公演

行ってきました レッドプリースト
http://www.allegromusic.co.jp/RedPriest.htm
初来日だったらしい  また来るといい
上野駅を出てすぐの 東京文化会館ってとこ 一度ここで何か聴いてみたかったのでちょうどよかった しかし遠い
ほぼ定時ダッシュで同行者と合流して 全力疾走してやはり遅刻
横浜から上野までどうしても50分はかかってしまう  結局 春 をまるまる聞き逃してしまった ちょっと残念

リコーダー バイオリン チェロ チェンバロ
みな黒と赤の鮮明な衣装で 弦楽器二人が女性 チェロは首からかけられるように衣装と同じ模様の紐で釣ってあり 立ったり弾いたりかかえてピッチカートをすることが可能となっていた

遅れて入って最初の曲がビーバーのロザリオのソナタ 初期バロックの代表的な作品で 演奏もまあ普通に楽しい といった感じ これはリコーダーを含まない 
次にファン・エイク無伴奏の変奏曲  
ピアーズのニーノがどんどん細かくなっていく  タンギングがきちんとはまれば 高速パッセージの歯切れよさが最も際立つ楽器はリコーダー ということで間違いないだろう  
驚異的な速さだ と感じてから最後にはたっぷり二倍は速くなっていた
そして ヘンリー・パーセルの劇音楽 真夏の夜の夢 で ピアーズが劇の説明を演技力ゆたかに説明していた  噛んで含めるようなとてもゆっくりとした英語だったが それで半分もわからなかったのは悲しかった  とりあえず妖精が踊ったりシャコンヌが楽しいよ といった解説  このあたりからだんだん本領を発揮してくる  

演奏がとても演劇的なのだ  シェークスピアのお国柄か
妖精の軽やかに飛び回る様子 リコーダーが高音域でスタッカートをぴこぴこやっている横で弦楽器は小さな棒を使ってコルレーニョ風の音を出す あるいはチェンバロが演奏の合間に手をたたく  
チェンバロはプログラム進行につれてどんどん独自の行動を始めるようになる

四季の夏 楽譜にかなり大胆に手を加えており 弦楽合奏とバイオリンの編成から組替えるときに曲自体再構築していると考えていいくらい  特にチェロとチェンバロに華やかなソロが割り当てられており かなりの超絶技巧を要求していた 
カノン風にはじまり 鳥の鳴き声はまさにリコーダーでそのまま  
牧人が嘆くシーンでは下降半音階の上でたっぷりと歌いたくなるという当然の誘惑を断ち切って むしろ加速するところが本領発揮か
第二楽章 眠る牧童をチェンバロに背をもたせかけて床に座り込んだリコーダーが演じ チェンバロが飛び回る虫を描写するが三度の単純な動機なので殊更に退屈そうにしている表情が秀逸  あくびでもしかねない勢い  その二人を女性二人の弦楽器が遠雷を表すトレモロで威嚇  バイオリンはおろかチェロまで楽器を抱えて迫る演技は爆笑もの  
第三楽章 夏の嵐 ひたすら16部音符の分散和音とトレモロ 最も難しいパッセージをチェロに押し付けて高音の二人が煽ったり  
ほとんどバルトークかと思うくらい激しい箇所もあった

休憩  ベルやアナウンスはないらしい

秋  
まずバッハの無伴奏チェロニ短調  これはとても真摯な演奏
このチェロ奏者は無伴奏のCDを出したらしく  そのお披露目の意味もあるのだろうが  茶目っ気たっぷりのプログラムの中に深い曲を混ぜることで アクセントを出そうとしたのだろう
真面目とはいえ 表情はかなり豊かで 楽譜上は均一なリズムの曲を情熱的に揺らしていた  特に秋に関連した曲ではないが 憂いを帯びた曲調のせいか

そしてヴィヴァルディの秋
二本リコーダーを楽しめるのがここ  酔っ払いの描写では 動物の謝肉祭さながら音をずりさげる 眠りこけてしまう  
しかしそこはさすが紳士の国  英国国家がチェンバロで鳴らされるとすぐに気合が入る
第二楽章はもともと収穫祭のあとで眠る人たちの描写だがここでは旋律楽器はみんな眠ってしまう  チェンバロが幻想曲風に独りで演奏し 第三楽章の狩をはじめる
みなギャロップを演じながら演奏を開始し 曲が獲物を見つけたくだりに入ると どうやらリコーダーが標的らしい  迫る犬や鉄砲を描写する弦楽器に追いかけられ 敏捷に逃げ回るリコーダーも ついに追い詰められ息を引き取る  最後のいくつかのパッセージは完全に舞台に仰向けになり 弦楽器は意気揚揚とギャロップで引き上げる   最後にチェンバロ奏者がリコーダー奏者の足をひきずって舞台後方に引き下がる   という一幕   ようやるわ

魔女の踊り という曲では 不気味なスルポンティチェロの入り混じる演奏の合間に奇声をあげ あやしい仕草をし しばらく姿の見えなかったリコーダーがチェンバロの陰から手だけ出したり悪魔の面をかぶって顔を出したり


で 冬
まずはコレッリのクリスマス協奏曲
イルジャルディーノ・アルモニコより更に3倍ほど速い つまり通常の5 6倍ほどで前奏を終えた後 意外とクリスマスの雰囲気をそのまま出して穏当な 普通の古楽器団体くらいの過激さですすむ
ト長調のやわらかい部分ではトレッリ風の高速パッセージ後の再現がとても表情豊かになっていてかなり胸に迫る物があった  ここの音楽的な演出は実にうまいと思った
あとは普通かな 演劇も特になかったし
最終楽章のパストラーレはバグパイプ風の響きを強調していたが これは古楽器ではたまに見られるもので 特に斬新というわけではなかった  ってそんな聞き方をしていたらもうモダン楽器なんかでは聴けなくなってしまうし 事実そうなりかけてはいるんだけど

でもよく考えたら カルミニョーラもイルジャルディーノも弦楽オーケストラであり 響きの多彩さはある程度保証されているわけで  それを4人だけで演奏しても表現力として遜色ない というのはやはりおどろくべきことだろう  リコーダー4本で吹いたときにはやはり物足りなく感じたものだけど まあ修行不足ってことか  ちなみにこのクリスマス リコーダー二本のトリオソナタバージョンとかドメニコ・ロッシによるチェンバロ独奏版もあるらしい

そして最後 ヴィヴァルディの冬
出だしは当然スルポンティチェロのきしみ  最近ではモダン楽器でもこのやり方をするところが増えている  クレーメルのエイトシーズンも確かそうだった  彼らはもともとスルポンティチェロ好きだけどね
リコーダーのあきれるほどの高速パッセージが続き 
第二楽章 ここはクレーメルの倍速を超える表現があるか と思っていたら なんと曲そのものを変えてしまった  
ヴィヴァルディの冬 カリブの休暇バージョン 
なんか突如として南国の雰囲気になってのんびりしてしまう
フィナーレは意外と普通  ただ最後のほうで弦楽器のハーモニクスが出てきたのはおどろいたけど ちょっと響きが足らなかったかかも

アンコール二曲目のヘンデルは穏やかで親密な子守唄  ちょっとしんみりする  またね
今度は横浜に来て下さい 横浜美術館はとてもよい響きを持っていますよ
さて寝るか