gymnoの自由談

音楽系、プログラミング系の内容 方針はいずれ

ディープブルー

皇帝ペンギン
http://d.hatena.ne.jp/gymno/20050913#1126624241
の影響でようやくこの海の大作を見る
即座にわかるように NHKの生き物地球紀行あるいはその続編の
地球ふしき大自然
http://www.nhk.or.jp/daishizen/
の路線上にあることは間違いない しかしもちろんそれに留まらない なにしろ天下のBBC 特に最近のNHKにありがちな安易な妥協がない そういや映像の世紀はアメリカABCとの共同らしい あれもスタジオトークの一切ないのがよい


この作品では人間は現れずそれどころか人工物さえ殆ど現れず例外的に深海で潜水艦がわずかに映し出されるだけだ ナレーションもできる限り抑えられていて必要と思われる解説すら時には削られていてひたすら映像そのものの美しさを堪能することになる  皇帝ペンギンの擬人化したナレーションは個人的にはあまり好きではなく このクールな解説は魅力だ 
自然界のきびしさももちろんぞっとするようなものだがここではもっと抽象的で美的な価値が現れているように見える さまざまな大きさや時間のスケールで華やかにくりひろげられる運動や色彩が人間の日常的な意味を離れて意識に直接訴えてくる たとえばベートーヴェンブラームスでなくウェーベルンブーレーズラヴェルのような
また それらのスケールは自在に操られ 拡大縮小早回しスローモーションが適材適所で使われている ただしつねに鮮明でぼやけることは決してない


作品タイトルの深海はかなり後のほうで現れる それらの奇怪な深海魚やイカ プランクトンは確かに目を奪われるがそれよりももっと普通の空間海面近くで繰り広げられる狩の様子が頭から離れない 海面に飛び込んだアホウドリが数万の一塊と化した魚を追って海中を泳ぎまわるそのありさまは あっという間に日常性を失ってほとんどエッシャー的な幻惑を呼び起こす
夜の浅海底で小魚を探して群れを成して徘徊する鮫は 人類がまだ洞窟に住んでいた頃の原始的な恐怖をそのまま復活させたかのようだ


皇帝ペンギンもいる
ウミガメが少ないながら悠然と泳ぐ 独立した作品にしてほしい


作品の最後に海洋研究がもっと日の目を見るようにとの個人的な熱い思いが突然ほとばしって この印象的な映画が終わる