- 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,佐々木昭夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 文庫
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ようやく読み終えた
友人が本の作成に関わったということで 普段読まないジャンルに手を出す
有名な本らしい 著者は世界史の権威
一見して改行が少なく 文字ばかりの文面だし小説とは違うのでそれなりに硬い文体だとは思うのだけど意外に読みやすい
ストーリーは明快で アフリカに誕生した時以来さまざまな病気と闘ってきた人類
地域によって感染しやすさが異なるとの説明をBGMに 人類はより緯度が高くて気温の低いあるいは乾燥した地域に広がっていく
その後 都市文明なんてものが起こると 人が集まり疫病の蔓延への床を整備する
すると都会では人口が足らなくなり したがって周辺の農村から労働人口が供給される必要が生じる
疫病の方も 激しく感染して宿主を殺してしまうと広がりようがないのでそういった病原菌は自然淘汰的にいなくなり 程ほどの距離を保つものが結果として生き残ることとなる
キーワードは免疫とか風土病とか小児病とか
疫病と人類の相互作用は徹底してマクロな視点で つまり群れと群れの相互作用として語られるが 疫病はもちろん病原菌によるもので それへの感染はミクロ寄生と位置づけられ 戦争や領主による収奪等のマクロ寄生と対になって語られる
もっともこの本ではタイトルから当然のようにミクロ寄生が主として語られる マクロは同じ著者の別の本を読むべきであろうし そうしたい
大きな流れとしては この後交通の発達特にモンゴル騎馬民族や大航海時代によって容易に疫病が広がる様子が可能な限り文献にあたり足らないところは著者の想像力で活き活きと描かれる
圧巻はやはりスペインによる中部アメリカの侵略だろうか
少人数で敵地にあったスペイン人がホームグラウンドにあり軍事国家でもありまた人口も従来言われていたよりはるかに多かったと推定されるインカなどの国家にどうして打ち勝つことができたのか の疑問
に対し 当時殆ど感染症が存在しなかった中米に 執拗に破壊的に繰り返し押し寄せる天然痘 ペスト その他もろもろ
これによって人口の9割が死滅する
残りの1割がたとえ健康そのものだとしても精神的に侵略者たちに立ち向かうことができるはずがなく 彼らの神々はカトリックの前に滅び去る
このへんの話は愛国的な意味で学会内に争いがありそうだ が ともかくこの第5章の描写は圧巻であった
ウェルズの宇宙戦争の逆バージョン
他にもラテン語の衰退にペストの影響を見たり モンゴル帝国の縮小やアレクサンダー大王の遠征の突然の中止など 世界史のさまざまな出来事に対して疫病を用いた仮説が用いられるのはなかなか爽快である
どうしても人と人とのつながりとか政治や文化で語りたくなってしまう出来事が 噴火や気候変動 またこの本のようにウィルスや細菌で明快に語られると新鮮な視点を持つことができる もちろん著者が繰り返しているように地域や年代によって史料が圧倒的に足りず アカデミックにはちと厳しい主張もあるだろう
しかし 大胆ではあるが別に不合理というわけでもなく というかそもそも本が出版されてからもう何十年もたっているのだから この本の内容を基にした研究も進んでいるのかもしれない
奇しくも 今日の
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20080527.html
では
感染症の蔓延、新商品の市場開拓、村落の人口動向予想、商品の配送・・・。対象は多岐にわたる。出口教授は、経済学と理学の二つの博士号を持つ。その両方を生かすことこそが自分の生きる道と考え、社会現象のシミュレーションに取り組んできた。
その一つが「天然痘によるバイオテロ発生」というシミュレーション。出口研究室から生まれたこのシミュレーションは世界最高水準との呼び声が高いものだ。天然痘はすでに撲滅されているため、感染に対する対策はなされていない。それを逆手に取ったバイオテロの危険性が指摘されている。仮に天然痘が発生した場合、いったいどんな対策が有効なのか・・・?爆笑問題の二人が挑戦する。
なんてなことをやっていた
鳥インフルエンザの話がしゃれにならない今日この頃 あえて身近でないスケールでこういう問題を眺めてみるのも肥やしになるかもしれない
追記
はてなの記法だと ウィリアム H.マクニール という著者名は出てこないのね 佐々木さんは翻訳者だよ