gymnoの自由談

音楽系、プログラミング系の内容 方針はいずれ

NHKスペシャル|謎の海洋民族モーケン 虚空の旅人

http://www.nhk.or.jp/special/onair/080217.html

>>
彼らは、全長10メートルほどの小船に家族で住み、銛で魚を突き、素潜りで貝やナマコを取って糧を得る。潜るのは昼だけではない。月夜、無数の夜光虫が眩く光る海を、水深20メートルの海底まで小さなライトだけを頼りに素潜り漁をするのだ。 <<
というのはただのつかみで かなりネタ満載である
番組前半は彼らの生活を内部から追う 人間離れした肺活量と動体視力で素もぐりに槍一本で魚をあっさりしとめてしまう 
潮溜まりに行けばつぼいっぱいのなまこを採集して家族で食う 陸に上がって森で果物を採ったりなんと猪をしとめたり どうも生活を満喫している
人間離れといっても アフリカのブッシュマンなんかも途方もない嗅覚視力集中力持続力で獲物を何日も追跡していく  もともと人が持っていた能力であり どうも現状の自分を見ると年始とは別の意味で嘆かわしい  もっともこれは僕だけではない
番組途中 ウミガメをもりで突き刺し生け捕りにして 海の精霊に捧げるために切り刻んで煮込んでみなで食べるシーンがあったがあれはあまりに残酷であり 子供には見せられまい 
ウミガメは海と陸とを行き来するがゆえにモーケンの民の分身であり よってこれを海の精霊に捧げて祟らないように願うとのこと  まあ仕方がないか 
許す


後半は この生活の陰の部分
実は といっても最初から紹介はしていたが 地理的にはあのミャンマービルマ)に属している  といってずっと海の上にいるので管理の手が及ばない
よって政府としてはなんとかして定住させたいが彼らは自由を愛するといって受け入れない  なお軍政批判は別になかった
 
しかし貨幣経済の波は徐々に浸透してきて家族全員で2週間かけて集めたなまこが5000円 安く買い叩かれ逆に米や燃料は通常価格の倍もぼったくられる 
その上 中国でのなまこ需要の急増により本土から潜水服を装備した猟師が大量になまこを漁り 取りつくしてしまう 
そういえばどっかの雑誌によると今は中国や欧米の富裕層で魚介類の需要が急増しており 活きの良い品はどんどんそちらへ流れ デフレの日本など余り物ばかり回される とのこと やれやれだ まあこれは番組とは関係ない

で なんで精霊の守り人
上橋菜穂子による精霊の守り人は昨年NHKでアニメ放送され 非常に評判がよかった  
http://ja.wikipedia.org/wiki/精霊の守り人
同時期に放送していた電脳コイルと並び 非常に楽しめた  デスノート以来の興奮だった  あれはマンガだけどね どちらも週刊ということで

で あれの続きとして守り人シリーズが刊行されている
シリーズ第4作 虚空の旅人 ではチャグム皇太子が主役で隣国の儀式に参加する話だが その国にモーケンの民のような海上生活者が出てくる
虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド)
あちらはどちらかというともぐりよりも操船技術に長けているということに重きが置かれていたが 管理のしづらい存在で国家としては手を焼いている という意味ではかなりかぶるものがあった
そういやゲド戦記の第3作 さいはての島へ にも海洋民族が出てきていた気がする  ゲドが竜に会いにさいはての島へ向かう途中だったと思うが あれも印象的だった  船上生活にはファンタジックな気分を呼び起こすものがあるのだろうか


守り人シリーズは図書館で予約してがんばって読んで 今日は神の守り人と蒼路の旅人を借りてきたところ
神の に出てくる狩人による追跡がそれこそ おっと ブッシュマンって差別用語だったのか もしやと思ったが  サン人というのが代わりにあってしかしそれも差別用語であり 今は彼ら自身による総称決定を待っているとのこと 不便だな
まあブッシュマン(仮)のようなすぐれた追跡能力を持った人が出てくるのですよ この話には
そろそろ神の の第一巻を読み終わるところだが これがまたデューン以来の面白さ 児童文学も侮れない というかこれって子供が読んで理解できるのだろうか
加害授業 ちがった 課外授業ようこそ先生に上橋菜穂子が出ていたのを最近見た  
彼女は授業の題材として当然物語を作ることを選ぶ  そしてなんでもいいから話を作れ ただし話の中身の細かいところにこじつけでもいいから説明がつけられなければならない  だからいろいろ人間の生活について調べねばならない  という教えはなかなか興味深い

もうひとつ連想したのが SFのレズニックによる キリンヤガ というオムニバス
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)
大学時代 そういや最近SFを読んでない よくないな と生協の購買に行ったら最新刊でヒューゴーとネビュラ受賞とあったのでミーハーで買ったもの
宇宙時代に小惑星自治区を作り そこでアフリカのケニヤの伝統的な生活を再現しようとする人間の苦悩を描く異色な作品集  
古きよき生活にもどる という願いがどれほどの犠牲をともなうものか またそのような意思によって統治されるというのはどういうことなのか

よく言われているとおりやはり空にふれた少女が絶品だが 主人公の最後のたたかいである最後の話もこれまた泣ける

モーケンの人々はいつまであのユートピアの生活を続けられるのだろうか