gymnoの自由談

音楽系、プログラミング系の内容 方針はいずれ

ミルトン

失楽園なんて書くとどうやらあらぬ誤解をうけるらしい
ここで書いているのはサタンが神に逆らって天使ガブリエル(燭天使だのセラフィムだのという階級の名称はミルトンにおいては結構適当らしい)と大戦争をやらかして地獄におちて地球に飛んできてイブを誑かすあれである
前から読もうと思いつつこの年になるまでご無沙汰だったのはなぜか実際以上に長いと勘違いしていたのと 詩の形式で読みづらいと思っていたからだが 岩波文庫から上下二巻で出ているこれは訳注も丁寧すぎるくらい充実しており たいへんよみやすい
現在はサタンがエデン平原の東にある アダムとイブがいちゃついている庭園にもぐりこんでガブリエルに捕まって逃げ出し 二人に天使ラファエルが警告を与えているところだが ここに至るまでのサタンの冒険 地獄の惨状 天国での神とイエスの茶番などがギリシャローマの悲劇 神話(含新約聖書) ギルガメシュ叙事詩ヘブライの民話(含旧約聖書)その他から豊富に題材やことばを集めて語られるのは生き生きとした壮大なファンタジーである。単に古典というだけでなく普通に面白い。
トールキンの「指輪物語」に比べてさすがに類型的でキリスト教のありがたいおしえが少々(天国の描写ではかなり)鼻につく以外は十分読み物に値する。中学生くらいによんでいればよかったと悔やむが 聖書の知識もあまりなかったし やはり無理だっただろう さかんに天文学者ガリレオが出てくるところもいい 同時代ということでプトレマイオスの天動説とコペルニクスの地動説で優劣が決しがたかったらしいが 中立を維持しているミルトンはえらい (ちなみにキリスト教としても独自の見解を持つそれなりの異端思想の持ち主だったらしい)

この勢いでダンテの「新曲」も読みたいが ide:trino氏も就活に励んでいるようだし公務員試験の勉強でもまじめにはじめますかね